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「認知症の教室(一般市民用)」で記事を検索しました。

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2019.02.16

認知症の教室(一般市民用)
軽度認知障がい~MCI~について(一般の方・専門職初心者の方向け) 認知症の教室⑪ 軽度認知障がい・MCI(Mild Cognitive Impairment)という言葉を最近よく聞かれるのではないでしょうか。 認知障がいと言う言葉から、何らかの病気と思われる方も多いでしょう。 しかしMCI自体は病気ではありませんし、認知症でもありません。 ただ、認知症という病気の予備軍と言えるのです。 つまりMCIと判断されるということは、放置していると認知症になる確率が高くなるということなのです。 パズルでいうと、この程度ならすぐにはめ込めて完成させることができます。 年相応のもの忘れであり、生活に支障が出るわけでもありません。私たちにもよくあることです。 しかし、MCIだと、パズルがもう少し崩れている状況になります。 パズル全体が崩れているわけではないので、生活に支障はあまりでていませんが、放置しておくといつ崩れてもおかしくない状況とも言えます。 そうなると認知症と言う診断に進んでしまうでしょう。 そうならないためにも、MCIと判断された方には心身への様々なアプローチが各自治体で用意されているのです。 なお、MCI領域に入ってしまう要因としては、生活習慣病の影響が大きいとされています。 適切な食事、適度な運動などを日頃から心掛けることで、MCIから認知症への道を変更できる可能性が大きくなるのです。 MCIについては、長谷川洋先生が下記の図のように、わかりやすく説明されています。参考にしてください。 (中央法規出版「認知症のケアマネジメント」長谷川洋・石川進著 P23より)
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2019.01.31

認知症の教室(一般市民用)
一般の方・専門職初心者向け「もの忘れについて」⑤ ~記憶の断片~ センター長の石川です。 最近、人の名前が出てこないとか、すぐに物の名前が思い浮かばないとか、もの忘れが気になることは多かれ少なかれあるという人がおられるのではないでしょうか。 もの忘れと言っても、単なる年相応のもの忘れと、認知症になるかもしれないもの忘れと、実際に「病気」としてのもの忘れとでは異なるのです。 それをわかりやすく、ジグソーパズルの写真で説明してみます。 例えば、下の写真のように一部だけが欠けていても、私たちは、全体的に何の絵なのか理解できますし、欠けた部分が新郎の顔のパーツであったり、猫のパーツであったりと言うことがわかります。 新郎の顔と青空をはめ込めばよいと言うことがわかります。~知育玩具・知育教材HPより~ 認知機能の低下がなければ、断片的に記憶を忘れても、全体像が分かっているので生活に支障はなく、欠けた部分も大体想像がつきます。~知育玩具・知育教材HPより~ 時たまこのように一部のパーツ(記憶の断片)が見当たらなくなる(思い出せなくなる)ことはあっても、いずれは思い出せますし、全体像が理解できないことはありません。全体像が把握できるということは、生活においては支障がないということです。 しかし、ひとたび認知機能の低下が始まると、全体的に霧がかかったようになり、例えば新郎の姿自体が明確ではなくなりますし、猫のパズルも全体がわからなくなり、少女の姿も、さらに欠けている部分もなんなのかがわからなくなってしまいます。 認知期のが低下すると、全体に霧がかかったような状況になり、人物像もあやふやとなり、欠けた部分がなんであるのかもわからなくなる。 認知機能が低下すると、全体像が分からなくなるし、目の前の空白が恐怖になります。 認知症でない人の場合、欠けたパーツがあっても、パズルの全体像がぼやけることはないのですが、認知症になると、欠損する記憶だけでなく、全体像も霧がかかったようになり、確かに見えていたものが不確かなものに見えてしまうのです。 次回もジグソーパズルを使って説明します。
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2019.01.05

認知症の教室(一般市民用)
一般の方・専門職初心者向け「もの忘れについて」④ ~周辺環境~ 認知症の教室8 年末年始を挟み、少し時間が空いてしまいました。 少し前回を振り返ってみると、 自らを認知症であるとカミングアウトした長谷川和夫先生の言葉として、「確かなことがなくなっていくような感覚」と認知症の症状について述べられています。 もの忘れが、確かなことを失わせ、不安感に繋がっていること、そしてその不安感をありのままに恐怖感として受け止めていく人と、自分自身をその恐怖心から護るために、不安感そのものを否定する人とに分かれていくようなところがあるのではないでしょうかという所まで説明しました。 ここで押さえておかなければならないのは、上記どちらの人の場合も、周辺環境が多大に影響するということです。 つまりもの忘れから生じてくる不安は、周囲のあらゆる環境(人や生活環境など本人を取り巻く全て)に影響され、その後の行動へと繋がっていくということなのです。 (詳しくは、「認知症のケアマネジメント」P72「中核症状とBPSD」長谷川洋先生記述分を参照されたい) 当然一人ひとり周辺環境は違いますし、本人のパーソナリティも違うので、BPSDの出現の仕方やその度合いも違ってきます。 では、周囲のあらゆる環境に影響されるとはどういうことなのでしょうか? ムンク「星月夜」casaより 人間は自分の意思で行動しますが、その行動の元になっているのが環境なのです。 例えば、今は寒さ厳しい冬ですが、皆さんが今、寒風吹く物陰にいて、見えているところに日の当たるあたたかい場所があったとしたら、心身とも冷え込む今の場所よりも、暖かい場所に行こうと判断して行動に移すでしょう。このように私たちの行動には、環境が大いに影響していると言えるのです。 人の場合も、あまりなじみでない人の中にいるよりは、なじみのある人の中に行きたいと判断して行動するのも同じことです。 ところが、行動したくても行動できなくて、ずっと寒風吹く物陰にいるとしたら、或いは嫌な人がいる中にずっといるとしたら、皆さんはどう思うでしょうか? ムンク「太陽」公式HPより 日差しのある暖かいところにいると、心も体も安穏としますが、ぶるぶる震えるような寒い場所ならば、きっと心も体も激しくいら立つでしょう。 BPSD(ケア側からすると認知症の人の行動にケア側が困った現象を意味し、認知症の人からすれば困惑混とんとした状況)は、このようにその人を取り巻くあらゆる環境によって出現状況が左右されるのです。   センター長 石川進 (つづく)
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2018.12.19

認知症の教室(一般市民用)
認知症の教室5「もの忘れについて」③ ~一般の方・専門職初心者用~ 認知症の教室5「もの忘れについて」③ センター長の石川です。 今回は、もの忘れを、本人の立場で考えてみたいと思います。 残念ながら現在の医学では、認知症にならないための薬も、確実な予防法もありません。 逆に言えば、誰にでも認知症になる可能性はあるということなのです。 その認知症の初期症状として現れるのが「もの忘れ」です。 特に初期の頃は、もの忘れのことが非常に気になります。 当然私たちにも年相応のもの忘れはありますので、 認知症という「病気としてのもの忘れ」なのか、そうでないもの忘れなのか見極める必要があります。 病気としてのもの忘れの場合、まずは「不安」から始まります。 認知症になった多くの人が、もの忘れを病識としてとらえられたと述べています。 それは、言いようのない、霧に包まれたような「不安」から始まったそうです。 つまり、私たちが普段感じているもの忘れの感覚、 「えっと、なんだっけ?う~ん思い出せないな~、最近もの忘れが多くなった」という感覚よりも、ぐっと深く重たい不安感と言えます。 自らを認知症であるとカミングアウトした長谷川和夫先生は、「確かなことがなくなっていくような感覚」と述べられています。 もの忘れが、確かなことを失わせていってると、言えるのではないでしょうか。 そしてその不安感をありのままに恐怖感として受け止めていく人と、自分自身をその恐怖心から護るために、不安感そのものを否定する人とに分かれていくようなところがあるのではないでしょうか。   (つづく)
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2018.12.06

認知症の教室(一般市民用)
「もの忘れについて」その② 認知症の教室 センター長の石川です。 「もの忘れについて」の2回目です。 もの忘れと言っても、認知症の進行具合で変わってきます。 今回は認知症初期のもの忘れのお話しです。 特に初期の場合は、年相応のもの忘れ(病気でないもの忘れ)との区別がつきにくく 認知症が見逃されてしまうことがあります。 また認知症ではないけれど、軽度認知障がい(MCI)の方にも、もの忘れはあります。 そのため、一般の人から見ると、 もの忘れがあると、年相応のもの忘れなのに、すぐに認知症と思ってしまう人と、 逆に年相応のもの忘れと思って、認知症に気付かない人がいます。 なかなか難しいですね。 しかし、定期的に身体的な健康診断を行い、早期発見早期治療が大切なように 認知機能の健康診断も必要なのです。 身体の病気だけでなく、認知機能の低下(認知症)に対しても、早期発見早期の対応が必要なのです。 少しでも「最近ちょっともの忘れが多いのでは?」と思ったら、健康診断の一環として本人に説明し、認知機能についても診察してもらいましょう。 なお軽度認知障がい(MCI)と判断された人のもの忘れは、現状では病気ではなくても、放置すれば認知症によるもの忘れへと進行してしまいます。 MCIについては後日書くこととして、次回は認知症の人本人から見たもの忘れについて書いてみたいと思います。
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2018.12.04

認知症の教室(一般市民用)
「もの忘れについて」① 一般の方並びに介護従事初心者の方向け認知症教室2 センター長の石川です。 今回は認知症の教室第2回目です。 一般の方だけでなく、新人介護従事者向けにもなっています。 今回は「もの忘れ」について、その①です。 前回同様、長谷川洋先生の文章をベースにしてお伝えします。 認知症というと一番思い浮かべるのは「もの忘れ」ですね。 しかし、もの忘れは私たちにも普段からあります。 隣の部屋に何かを取りに行こうと思って、隣の部屋に来たら、何を取りに来たのか忘れてしまって、「えっと、何を取りに来たんだろう?」などと思ってしまうことはあるかもしれませんね。 でもそのことがすぐに「認知症」と結びつくわけではありません。 認知症とは、もの忘れに伴い「生活に支障を生じている状態」であり、自分が体験した「出来事全体」を忘れてしまうという特徴があるのです。そしてそれは、まさしく「認知症」の「症」という言葉が付くように、 症状、つまり病気としてとらえることになるのです。 記憶を帯で例えれば、通常の物忘れは体験の一部を忘れるだけなので、その忘れた部分は思い出すことが出来ます。 しかし、認知症の物忘れは、体験全体を忘れてしまうので、さっきあったことも思い出せず、生活の支障へと進んでいくのです。 (中央法規出版「認知症のケアマネジメント」長谷川洋・石川進著 P5図表1-2参照) 体験そのものを忘れてしまうので、そのことを問うたり責めたりすることは、本人にはわけのわからない、つらいことだということを認識してください。   (つづく)
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2018.11.13

認知症の教室(一般市民用)
一般の方への講座シリーズ 1.「認知機能」について センター長の石川です。 週1回程度の割合で、認知症について載せていきたいと思っています。 今回は一般の方への内容になりますが、専門職の方でも初心者の方には読んでいただきたいと思います。中央法規出版「認知症のケアマネジメント」で、長谷川洋先生が書かれた部分を引用しながら説明します。   「認知機能」について 認知機能っていったい何でしょうか? あまり聞きなれない言葉ですが、実は私たちが日常生活を送るにおいて、とても大切な機能なのです。 例えば、AさんがBさんの話を聞いているとします。 AさんはそのBさんの話を瞬間的に解釈します。同時に部屋の温度を感じたり、明るさ暗さを感じたり、おなかが減ったななどという自分の身体的なことも瞬間に判断します。様々な生活上の動きの全てに認知機能が働いているのです。 つまり認知機能とは物事を判断する力なのです。日々の活動は、認知機能が保たれていることで成り立っているといえます。 ところがこの大切な認知機能の低下をもたらすのが認知症なのです。 (つづく)   *中央法規出版「認知症のケアマネジメント」長谷川洋・石川進 P2より
ブログ投稿画像 認知症の教室⑪ 軽度認知障がい・MCI(Mild Cognitive Impairment)という言葉を最近よく聞かれるのではないでしょうか。 認知障がいと言う言葉から、何らかの病気と思われる方も多いでしょう。 しかしMCI自体は病気ではありませんし、認知症でもありません。 ただ、認知症という病気の予備軍と言えるのです。 つまりMCIと判断されるということは、放置していると認知症になる確率が高くなるということなのです。 パズルでいうと、この程度ならすぐにはめ込めて完成させることができます。 年相応のもの忘れであり、生活に支障が出るわけでもありません。私たちにもよくあることです。 しかし、MCIだと、パズルがもう少し崩れている状況になります。 パズル全体が崩れているわけではないので、生活に支障はあまりでていませんが、放置しておくといつ崩れてもおかしくない状況とも言えます。 そうなると認知症と言う診断に進んでしまうでしょう。 そうならないためにも、MCIと判断された方には心身への様々なアプローチが各自治体で用意されているのです。 なお、MCI領域に入ってしまう要因としては、生活習慣病の影響が大きいとされています。 適切な食事、適度な運動などを日頃から心掛けることで、MCIから認知症への道を変更できる可能性が大きくなるのです。 MCIについては、長谷川洋先生が下記の図のように、わかりやすく説明されています。参考にしてください。 (中央法規出版「認知症のケアマネジメント」長谷川洋・石川進著 P23より)
ブログ投稿画像 センター長の石川です。 最近、人の名前が出てこないとか、すぐに物の名前が思い浮かばないとか、もの忘れが気になることは多かれ少なかれあるという人がおられるのではないでしょうか。 もの忘れと言っても、単なる年相応のもの忘れと、認知症になるかもしれないもの忘れと、実際に「病気」としてのもの忘れとでは異なるのです。 それをわかりやすく、ジグソーパズルの写真で説明してみます。 例えば、下の写真のように一部だけが欠けていても、私たちは、全体的に何の絵なのか理解できますし、欠けた部分が新郎の顔のパーツであったり、猫のパーツであったりと言うことがわかります。 [caption id="attachment_380" align="aligncenter" width="602"] 新郎の顔と青空をはめ込めばよいと言うことがわかります。~知育玩具・知育教材HPより~[/caption] [caption id="attachment_382" align="aligncenter" width="425"] 認知機能の低下がなければ、断片的に記憶を忘れても、全体像が分かっているので生活に支障はなく、欠けた部分も大体想像がつきます。~知育玩具・知育教材HPより~[/caption] 時たまこのように一部のパーツ(記憶の断片)が見当たらなくなる(思い出せなくなる)ことはあっても、いずれは思い出せますし、全体像が理解できないことはありません。全体像が把握できるということは、生活においては支障がないということです。 しかし、ひとたび認知機能の低下が始まると、全体的に霧がかかったようになり、例えば新郎の姿自体が明確ではなくなりますし、猫のパズルも全体がわからなくなり、少女の姿も、さらに欠けている部分もなんなのかがわからなくなってしまいます。 [caption id="attachment_381" align="aligncenter" width="602"] 認知期のが低下すると、全体に霧がかかったような状況になり、人物像もあやふやとなり、欠けた部分がなんであるのかもわからなくなる。[/caption] [caption id="attachment_383" align="aligncenter" width="249"] 認知機能が低下すると、全体像が分からなくなるし、目の前の空白が恐怖になります。[/caption] 認知症でない人の場合、欠けたパーツがあっても、パズルの全体像がぼやけることはないのですが、認知症になると、欠損する記憶だけでなく、全体像も霧がかかったようになり、確かに見えていたものが不確かなものに見えてしまうのです。 次回もジグソーパズルを使って説明します。
ブログ投稿画像 認知症の教室8 年末年始を挟み、少し時間が空いてしまいました。 少し前回を振り返ってみると、 自らを認知症であるとカミングアウトした長谷川和夫先生の言葉として、「確かなことがなくなっていくような感覚」と認知症の症状について述べられています。 もの忘れが、確かなことを失わせ、不安感に繋がっていること、そしてその不安感をありのままに恐怖感として受け止めていく人と、自分自身をその恐怖心から護るために、不安感そのものを否定する人とに分かれていくようなところがあるのではないでしょうかという所まで説明しました。 ここで押さえておかなければならないのは、上記どちらの人の場合も、周辺環境が多大に影響するということです。 つまりもの忘れから生じてくる不安は、周囲のあらゆる環境(人や生活環境など本人を取り巻く全て)に影響され、その後の行動へと繋がっていくということなのです。 (詳しくは、「認知症のケアマネジメント」P72「中核症状とBPSD」長谷川洋先生記述分を参照されたい) 当然一人ひとり周辺環境は違いますし、本人のパーソナリティも違うので、BPSDの出現の仕方やその度合いも違ってきます。 では、周囲のあらゆる環境に影響されるとはどういうことなのでしょうか? [caption id="attachment_285" align="alignleft" width="206"] ムンク「星月夜」casaより[/caption] 人間は自分の意思で行動しますが、その行動の元になっているのが環境なのです。 例えば、今は寒さ厳しい冬ですが、皆さんが今、寒風吹く物陰にいて、見えているところに日の当たるあたたかい場所があったとしたら、心身とも冷え込む今の場所よりも、暖かい場所に行こうと判断して行動に移すでしょう。このように私たちの行動には、環境が大いに影響していると言えるのです。 人の場合も、あまりなじみでない人の中にいるよりは、なじみのある人の中に行きたいと判断して行動するのも同じことです。 ところが、行動したくても行動できなくて、ずっと寒風吹く物陰にいるとしたら、或いは嫌な人がいる中にずっといるとしたら、皆さんはどう思うでしょうか? [caption id="attachment_154" align="aligncenter" width="387"] ムンク「太陽」公式HPより[/caption] 日差しのある暖かいところにいると、心も体も安穏としますが、ぶるぶる震えるような寒い場所ならば、きっと心も体も激しくいら立つでしょう。 BPSD(ケア側からすると認知症の人の行動にケア側が困った現象を意味し、認知症の人からすれば困惑混とんとした状況)は、このようにその人を取り巻くあらゆる環境によって出現状況が左右されるのです。   センター長 石川進 (つづく)
ブログ投稿画像 認知症の教室5「もの忘れについて」③ センター長の石川です。 今回は、もの忘れを、本人の立場で考えてみたいと思います。 残念ながら現在の医学では、認知症にならないための薬も、確実な予防法もありません。 逆に言えば、誰にでも認知症になる可能性はあるということなのです。 その認知症の初期症状として現れるのが「もの忘れ」です。 特に初期の頃は、もの忘れのことが非常に気になります。 当然私たちにも年相応のもの忘れはありますので、 認知症という「病気としてのもの忘れ」なのか、そうでないもの忘れなのか見極める必要があります。 病気としてのもの忘れの場合、まずは「不安」から始まります。 認知症になった多くの人が、もの忘れを病識としてとらえられたと述べています。 それは、言いようのない、霧に包まれたような「不安」から始まったそうです。 つまり、私たちが普段感じているもの忘れの感覚、 「えっと、なんだっけ?う~ん思い出せないな~、最近もの忘れが多くなった」という感覚よりも、ぐっと深く重たい不安感と言えます。 自らを認知症であるとカミングアウトした長谷川和夫先生は、「確かなことがなくなっていくような感覚」と述べられています。 もの忘れが、確かなことを失わせていってると、言えるのではないでしょうか。 そしてその不安感をありのままに恐怖感として受け止めていく人と、自分自身をその恐怖心から護るために、不安感そのものを否定する人とに分かれていくようなところがあるのではないでしょうか。   (つづく)
ブログ投稿画像 センター長の石川です。 「もの忘れについて」の2回目です。 もの忘れと言っても、認知症の進行具合で変わってきます。 今回は認知症初期のもの忘れのお話しです。 特に初期の場合は、年相応のもの忘れ(病気でないもの忘れ)との区別がつきにくく 認知症が見逃されてしまうことがあります。 また認知症ではないけれど、軽度認知障がい(MCI)の方にも、もの忘れはあります。 そのため、一般の人から見ると、 もの忘れがあると、年相応のもの忘れなのに、すぐに認知症と思ってしまう人と、 逆に年相応のもの忘れと思って、認知症に気付かない人がいます。 なかなか難しいですね。 しかし、定期的に身体的な健康診断を行い、早期発見早期治療が大切なように 認知機能の健康診断も必要なのです。 身体の病気だけでなく、認知機能の低下(認知症)に対しても、早期発見早期の対応が必要なのです。 少しでも「最近ちょっともの忘れが多いのでは?」と思ったら、健康診断の一環として本人に説明し、認知機能についても診察してもらいましょう。 なお軽度認知障がい(MCI)と判断された人のもの忘れは、現状では病気ではなくても、放置すれば認知症によるもの忘れへと進行してしまいます。 MCIについては後日書くこととして、次回は認知症の人本人から見たもの忘れについて書いてみたいと思います。
ブログ投稿画像 センター長の石川です。 今回は認知症の教室第2回目です。 一般の方だけでなく、新人介護従事者向けにもなっています。 今回は「もの忘れ」について、その①です。 前回同様、長谷川洋先生の文章をベースにしてお伝えします。 認知症というと一番思い浮かべるのは「もの忘れ」ですね。 しかし、もの忘れは私たちにも普段からあります。 隣の部屋に何かを取りに行こうと思って、隣の部屋に来たら、何を取りに来たのか忘れてしまって、「えっと、何を取りに来たんだろう?」などと思ってしまうことはあるかもしれませんね。 でもそのことがすぐに「認知症」と結びつくわけではありません。 認知症とは、もの忘れに伴い「生活に支障を生じている状態」であり、自分が体験した「出来事全体」を忘れてしまうという特徴があるのです。そしてそれは、まさしく「認知症」の「症」という言葉が付くように、 症状、つまり病気としてとらえることになるのです。 記憶を帯で例えれば、通常の物忘れは体験の一部を忘れるだけなので、その忘れた部分は思い出すことが出来ます。 しかし、認知症の物忘れは、体験全体を忘れてしまうので、さっきあったことも思い出せず、生活の支障へと進んでいくのです。 (中央法規出版「認知症のケアマネジメント」長谷川洋・石川進著 P5図表1-2参照) 体験そのものを忘れてしまうので、そのことを問うたり責めたりすることは、本人にはわけのわからない、つらいことだということを認識してください。   (つづく)
ブログ投稿画像 センター長の石川です。 週1回程度の割合で、認知症について載せていきたいと思っています。 今回は一般の方への内容になりますが、専門職の方でも初心者の方には読んでいただきたいと思います。中央法規出版「認知症のケアマネジメント」で、長谷川洋先生が書かれた部分を引用しながら説明します。   「認知機能」について 認知機能っていったい何でしょうか? あまり聞きなれない言葉ですが、実は私たちが日常生活を送るにおいて、とても大切な機能なのです。 例えば、AさんがBさんの話を聞いているとします。 AさんはそのBさんの話を瞬間的に解釈します。同時に部屋の温度を感じたり、明るさ暗さを感じたり、おなかが減ったななどという自分の身体的なことも瞬間に判断します。様々な生活上の動きの全てに認知機能が働いているのです。 つまり認知機能とは物事を判断する力なのです。日々の活動は、認知機能が保たれていることで成り立っているといえます。 ところがこの大切な認知機能の低下をもたらすのが認知症なのです。 (つづく)   *中央法規出版「認知症のケアマネジメント」長谷川洋・石川進 P2より