2018.12.19 | 認知症の教室(一般市民用)
認知症の教室5「もの忘れについて」③ ~一般の方・専門職初心者用~
2019.01.05
一般の方・専門職初心者向け「もの忘れについて」④ ~周辺環境~
認知症の教室(一般市民用)
認知症の教室8
年末年始を挟み、少し時間が空いてしまいました。
少し前回を振り返ってみると、
自らを認知症であるとカミングアウトした長谷川和夫先生の言葉として、「確かなことがなくなっていくような感覚」と認知症の症状について述べられています。
もの忘れが、確かなことを失わせ、不安感に繋がっていること、そしてその不安感をありのままに恐怖感として受け止めていく人と、自分自身をその恐怖心から護るために、不安感そのものを否定する人とに分かれていくようなところがあるのではないでしょうかという所まで説明しました。
ここで押さえておかなければならないのは、上記どちらの人の場合も、周辺環境が多大に影響するということです。
つまりもの忘れから生じてくる不安は、周囲のあらゆる環境(人や生活環境など本人を取り巻く全て)に影響され、その後の行動へと繋がっていくということなのです。
(詳しくは、「認知症のケアマネジメント」P72「中核症状とBPSD」長谷川洋先生記述分を参照されたい)
当然一人ひとり周辺環境は違いますし、本人のパーソナリティも違うので、BPSDの出現の仕方やその度合いも違ってきます。
では、周囲のあらゆる環境に影響されるとはどういうことなのでしょうか?
人間は自分の意思で行動しますが、その行動の元になっているのが環境なのです。
例えば、今は寒さ厳しい冬ですが、皆さんが今、寒風吹く物陰にいて、見えているところに日の当たるあたたかい場所があったとしたら、心身とも冷え込む今の場所よりも、暖かい場所に行こうと判断して行動に移すでしょう。このように私たちの行動には、環境が大いに影響していると言えるのです。
人の場合も、あまりなじみでない人の中にいるよりは、なじみのある人の中に行きたいと判断して行動するのも同じことです。
ところが、行動したくても行動できなくて、ずっと寒風吹く物陰にいるとしたら、或いは嫌な人がいる中にずっといるとしたら、皆さんはどう思うでしょうか?
日差しのある暖かいところにいると、心も体も安穏としますが、ぶるぶる震えるような寒い場所ならば、きっと心も体も激しくいら立つでしょう。
BPSD(ケア側からすると認知症の人の行動にケア側が困った現象を意味し、認知症の人からすれば困惑混とんとした状況)は、このようにその人を取り巻くあらゆる環境によって出現状況が左右されるのです。
センター長 石川進
(つづく)