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いぶし銀
「見た目の華やかさはないが実力や魅力があるもの」
私は彼のことを「いぶし銀のようなケアマネジャー」と呼び、尊敬していました。
彼とはわずか3年間しか仕事を共にしませんでしたが、
その謙虚で真摯な姿勢を見るたびに、いつも自分は何をやってんだかと思った次第です。
彼の名前から、浮かんだ言葉が「月に咲く花」でした。
月に花なんか咲かない?
いやいやそのような場所であっても花を咲かせてくれるような存在だったのです。
今年に入って私は、二人の若く熱き思いを持った後輩を病気で亡くしました。
将来を託せる人の早逝は、痛手です。
本当に全てにおいて心が痛むことなのです。
同時に、いつどこでどうなるかわからない人生。
一日一日を無駄に過ごすことがないようにしたいものですね。
どんなに暑くてもどんなに寒くても
宮沢賢治の詩のように、自転車で走り回っていた彼の姿が
今でも目に浮かびます。
石川が詩を改変しました。
「雨ニモマケズ」
雨にも負けず
風にも負けず
雪にも夏の暑さにも負けず
新型コロナウイルスの脅威と恐怖の中でも
丈夫なからだと心をもち
決して怒らず
いつも冷静に対処し、利用者には笑っている
一日に、相談・訪問・デイ・ショート
守るべき人たちのことを
よく見聞きし分かり
そして忘れず
地域の住民や高齢者にとって
灯台のような建物から
東に病気の高齢者あれば
行って適切なマネジメントをし
西に疲れた介護者あれば
行ってそのつらさを受け止め
南に死にそうな人があれば
行って看取りを支え
北に認知症の人が不安の中にいれば
あたたかなまなざしと言葉をかけ
新型コロナウイルスの恐怖に怯えながらも
日照りの時は汗を流して自転車をこぎ
寒い冬も北風に負けずに歩き
マスコミにはその地味な努力を
褒められもせず
苦にもされず
それでもひたすら頑張っている
そういういぶし銀のようなあなたを
私は
誇りに思いたい。
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センター長の石川です。
私は以前から認知症は携帯電話が使えない状態と同じということをお話ししていました。
今、現在を生きる人たちにとって携帯電話は生活の一部どころか、
その人の心身の一部ともいえるくらい重要なものになっています。
「携帯電話が使えないとしたらどうする?」と、若い人に尋ねたら、
皆さんそれは困る、ありえないと返答します。それは若い人でなくても同じでしょう。
携帯電話は、認知機能そのものです。
認知機能の技術の粋をこめて作られたものです。
使う私たちも認知機能をフルに働かせてスマートフォンを使います。
しかし、ひとたびその認知機能があやふやになっていく認知症になってしまうと、
携帯電話は使えなくなってしまいます。
携帯電話は、あらゆる情報の収集や伝達、決済、予約に至るまで様々な機能を担っています。
その携帯電話に電波が来なくなってしまったら、現代の人たちはたちどころにパニックに陥ります。
何故ならば携帯電話は心身の一部と化しているからです。
情報が入らない、伝えられない、それだけで大パニックです。
怒り出す人がいれば、イライラする人もいます。
それはその人たちの生活そのものにも影響してしまうという状況だからでしょう。
認知症の人の場合、認知機能が働かなくなります。
つまり、携帯電話がつながらないのと同じ状況に陥ってしまうのです。
何を言われているのか理解しがたくなり、伝えようとすることも伝えられなくなるのです。
ですから混乱し、時に怒り、イライラし、消沈する人もいるでしょう。
何故ならば、生きていくことそのものが脅かされるからです。
まさしく今回のKDDIの通信障害は、
認知症の人と同じような状況に携帯の利用者がなってしまったといえます。
私もその一人でした。
しかし30年前までは、携帯電話などなくても普通に生活していました。
その時はその時で不便だとは思わなかったのです。
今こうして携帯電話の電波に翻弄されている人々。
便利な世の中、こんな世の中かもしれませんが、
ひとたび使えなくなってしまったら、これほどもろいものもありません。
一方認知症の人は、非認知機能の中で一生懸命に生きていく道をさぐっているといえます。
認知機能を駆使している現代人が、認知機能が使えなくなっても、
非認知機能を働かせて何とか生きていこうとする人を、上から視点で見降ろすことなんてできるのでしょうか?
認知症の人とのかかわり方のヒント、
それはデジタル化以前の世界にあるといえます。