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2023.02.28

83歳のタクト 「チャイコフスキー交響曲第6番悲愴」

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まだ私が某施設で生活相談員の職についていた時のことです。
車いすに乗った認知症状のあるAさんは、常にケア職員に罵倒を浴びせ、
時に職員に車いすごとぶつかっていく、当時としてはケア職員から見て難儀な入居者でした。
私もどう関わったらいいかわからなかったのですが、
そのAさんの枕元に、クラシック音楽が入ったテープを多く見つけました。
当時、少しはクラシックに興味があった私は、Aさんにクラシック音楽のことで話し掛けました。

「好きな曲は何ですか?」と聞くと、「チャイコ、6番」と答えます。
チャイコフスキー作曲の「交響曲第6番悲愴」のことでした。

そこで、6番のCDを買ってきて、Aさんに聴いてもらいました。
落ち着きなく動き回るAさんが、約45分の演奏の間、ずっと落ち着いて聴いていたのです。
色々話をすると、青春時代につきあっていた男性がこの曲が好きで、
それ以来この曲だけでなく、クラシック音楽も好きになったとか。

以降、録画した演奏会を見てもらったりもしました。
オーケストラの配置(第1ヴァイオリン、第2バイオリン、ビオラの位置とか…)についても教えてもらったりしました。
以降、私にとってもチャイコフスキー第6番悲愴は忘れえぬ曲となったのです。

その悲愴を先日の日曜日、シンフォニーホールに聴きに行きました。
指揮者は今年83歳になる小林研一郎。
かつて何度もこの指揮者の曲を聴きに行ったことがありますが、日本でも有数の指揮者です。
そのコバケンもかなりのご高齢ながら、熱い指揮姿を見せてくれました。
タクトを振るうというより、「思い」を全身でオーケストラに伝えていく
(実際、あまりタクトを振らなかった)そんな感じでした。

「悲愴」の第1楽章は戦争や災害、コロナなどで苦しむ人々の苦悩が、
第4楽章は老いと死を見つめるような心にぐっと入る魂の演奏でした。

因みにもう一つのプログラムはラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」。
この演目、今日も聴きに行くんですよね~(苦笑)