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2021.05.29

若年性認知症の方との関り(16)【車の乗り降りの難しさ】

トピックス

認知症の教室(一般市民用)

認知症の教室(専門職用)

毎朝お迎えに上がるとFさんは超ご機嫌斜めです。
元々Fさん自身はスナックを開いていたため、夜半過ぎに寝て、昼前に起きるという生活でした。

そのため、朝早く起きるということに慣れていないのです。
デイサービスもできるだけ順番を後にするようにしましたが、やはり朝は闘いでした。

暴れるFさんを送迎車両まで二人掛かりで誘導するのですが、
車高の高いマイクロバスに乗ってもらうのが一苦労です。
中から引っ張る側と、後ろから押す側とにスタッフが分かれて何とか乗ってもらいます。

若年性認知症の方との関り

Fさんに限らず、認知症の方は、車の乗り降りが苦手です。

何故ならば、車の乗り降りの動作は、認知機能が低下している人にとっては
一度に多くの動作を短時間に行わなければならない大変困難度の高いものだからなのです。

右足左足それぞれの別の動きが必要になり、手もどこへもっていくのかがわかりません。
そして頭もぶつけないよう言われます。
さらに、車の乗り降りはケアスタッフもあせり気味ですので、あれやこれやと声を掛けます。
認知症の方はそれだけでパニックになってしまうのです。
そのパニックは身体をさらに硬直化させてしまいます。

若年性認知症の方の関り

私たちには簡単にできてしまう車の乗り降りの行動なので、
ケア側もイラついてしまうところがあるでしょう。
しかし本人にとっては「ど、ど、どうせぇちゅうねん!」みたいな混乱状況にあるのです。

ケア側の注意点としては、焦らずに行動を一つひとつに分解し、
その都度「ありがとございます。」「オーケーです。」「助かります。」など、
ポジティブな言葉を使うことが大切です。

若年性認知症の方との関り

さて、送迎車が動き出し、少しの間のドライブ中はFさんが穏やかになられる時間帯です。
不思議なことに、認知症の方は車に乗ると落ち着かれる方が多いようです。
この車の効用についてはまた別の機会に書いてみたいと思います。

若年性認知症の方との関り

デイセンターに到着すると、次なる課題が。
車の中ですっかり落ち着いたFさんは、今度は車から降りてくれないのです。
乗せるも苦労、降ろすも苦労の方でした。

そして小さな民家を改修したデイサービスセンターでのFさんの一日が始まるのですが、
ここからがスタッフにとっての本当の闘いになります。

しかし、その闘いを通して、Fさんとの繋がりが図られていくのです。

 

(つづく)

センター長の石川でした