2021.06.08 | トピックス, 必見!最新情報
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2021.06.10
「アデュカヌマブ」は認知症への救世主になれるのか?
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認知症の教室(一般市民用)
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センター長の石川です。
ニュースで大きく取り上げられていたアルツハイマー病の治療薬「アデュカヌマブ」
まるで特効薬が出来たかのような騒ぎになっていますが、
はたして認知症で苦しむ人の救世主になるのでしょうか?
まずマスコミは「治療薬」と言う言葉を使いますが、
「治療」はいわゆる健康な状態に戻すということになります。
しかし「アデュカヌマブ」はあくまでも完治するための薬ではなく、
病気の進行を止めるための薬です。
ご承知の通り、脳にアミロイドβという異常なたんぱく質が溜まり、
これが神経細胞を破壊し、アルツハイマー病に至るのですが、
そのアミロイドβを除去していく働きをするのが「アデュカヌマブ」なのです。
ここでわかりやすくまとめてみます。
〇「アデュカヌマブ」はあくまでも認知症を治す(認知症がない状態に戻す)ものではない
〇何故ならば、一度破壊された神経を元に戻すことが出来ないからです。
〇但し、早期から「アデュカヌマブ」が使えれば、ダメージをかなり少なくできます。
〇また、アミロイドβを以降溜め込まないので、神経細胞の破壊が予防できます。
〇つまり、「アデュカヌマブ」は治療薬と言うより、進行を抑制する薬と言えます。
〇ところが現状ではめっちゃ高価(月1回投与で50万?)で、庶民には手が出せません。
〇保険適用になるかは、現状では厳しそうです。
〇点滴による投与になります。
〇治験結果は見切り発車的で、効果がないと判断される場合もあります。
〇投与が必要な方や、いつ頃からかという判断がかなり難しいです。
〇既に進行が進んでいる方には「残念ながら…」と言う状況です。
現在発症していないけど、発症する可能性がある方が対象になりますが、
それでも今すぐ使えるものではありません。
◎但し、もし「アデュカヌマブ」に有用性が認められれば、壊れた神経細胞はよみがえらすことは出来なくても、人間は新しいことにチャレンジすることで、壊れた神経細胞の数ほどではなくても、新たな神経細胞が発生することがわかっています。つまり前向きの人生を送るなら、「アデュカヌマブ」の助けを借りて、かなりの生活維持が出来る可能性はあります。
いずれにしても、マスコミは大々的に取り上げ、製薬会社の株が一気に上がる状況ですが、
私たちが眼前としている方々には「残念ながら間に合わない」のが事実です。
また有効性が確約されても、庶民が使える薬になるか、
そして投与判断はどうなるのかなど課題は山積かなと思います。
以下、NHKニュースに出られた先生のコメントを抜粋しておきます。
東京大学岩坪威教授
今後、患者や医療現場に与える影響については、「今回の薬は、認知症を発症したばかりの状態からその後の進行のスピードを抑えるもので中等症や重症になるまでの時間を延ばすことでより生活を高いレベルで維持することができると期待される。症状が軽い段階がなるべく長く続けば介護の負担が少なく、本人も自分らしい生活が送れるようになるメリットは非常に大きいと思う。一方、薬を使えるかどうかを診断するためには脳にアミロイドβがたまりアルツハイマー病の初期段階ということを調べる特殊な装置が必要となる。さらに脳に局所的なむくみが出るなどの副作用への対応も必要で、専門医や専門施設を準備することが求められるのではないか」と指摘しました。
また、薬価が高額になるという指摘については、「バイオジェン社の予測する価格では、月に1回の投与に50万円以上と薬代が相当高い。これをどうやって負担するのかは世界各国どこでも大きな問題になると思う。」
国立精神・神経医療研究センターの中村治雅臨床研究支援部長
「今回の薬は、症状の緩和を目指したこれまでの薬とは異なり、原因に迫り、治せるかもしれないという期待もあり、患者や家族、介護者、それに医療者にとっては希望となる。しかし今回、完全には有効性が分かっていない中で迅速承認となっていて、FDAは今後も大規模な治験を行うことを求めている。手放しでは喜べず、本当に有効な薬なのかどうか、そしてどのような患者さんに対して使うべきなのかといった点に今後も注意を払うべきだ」と指摘しています。
「ここからは、ニューズウィーク誌より」
アルツハイマー病の患者やその家族を代表する複数の組織は、新たな治療法はどのようなものであれ(たとえ治療効果がわずかでも)承認されるべきだと言っている。だが多くの専門家は、今回の新薬承認は危険な前例をつくり、効果が疑わしい治療にも扉を開くことにつながりかねないと警告している。